【事例】ミルクの吐き戻しで生後6ヶ月の我が子が死亡。日常に潜む窒息リスクと、命を守るゲップの全知識。

「げぷっ」という小さな音と、口からこぼれるミルク。
授乳後の「吐き戻し」は、ほとんどの親が経験する、ありふれた光景です。

「よく飲む証拠だね」「ちょっと飲みすぎちゃったかな」

そんな風に微笑ましく見ていた日常が、一瞬で取り返しのつかない悲劇に変わる可能性があることを、私たちは知らなければなりません。

これは、実際に起きた死亡事故の記録と、赤ちゃんの命を守るための具体的な予防策を記した「死なせない教科書」です。

【事例】「観察不十分」保育施設で起きた、防げたはずの死

ミルクの吐き戻しで6カ月の男児死亡 認可外保育の元施設長に有罪

東京都練馬区の認可外保育施設で2018年、昼寝中だった生後6カ月の男児の観察を怠り、ミルクの吐き戻しで窒息死させたとして、元施設長に有罪判決が言い渡された。

判決によると、男児は昼寝中に吐き戻したミルクをのどに詰まらせたのに気づかれず放置され、窒息死した。男児は当時、うつぶせの状態から自力で体勢を変えられず、判決は「睡眠中の状態を細かく観察する注意義務を被告が怠った」と認めた。

この施設は、事故の前年に東京都から「睡眠状況の観察が不十分」との指摘を受け、改善策を報告していたが、実施していなかった。

男児の両親は「今回の判決が保育現場の改善や保育関係者の意識の向上につながるきっかけになり、息子の死が無駄にならないことを願います」とコメントしている。

(出典:朝日新聞デジタル「ミルクの吐き戻しで6カ月の男児死亡 認可外保育の元施設長に有罪」2025年3月11日)

この事故には、私たちが学ぶべき重要な教訓が2つあります。

  1. 「うつぶせ寝」の圧倒的な危険性。
  2. ミルクの吐き戻しは「観察」と「正しいケア」で防げる事故であること。

ご両親の「息子の死を無駄にしないでほしい」という悲痛な願いに応えるためにも、私たちは具体的な知識で武装しなければなりません。

なぜ赤ちゃんは吐き戻しやすいのか?

まず知っておいてほしいのは、赤ちゃんの吐き戻し自体は、多くの場合、生理的な現象だということです。

  • 胃の形が大人と違って垂直に近い「とっくり型」であること。
  • 胃の入り口(噴門)の筋肉が未発達で、逆流しやすいこと。

だからこそ、大人が適切なケアでサポートしてあげる必要があります。その要となるのが「ゲップ」です。

【最重要】命を守る「ゲップ」の重要性と正しいさせ方

授乳の際にミルクと一緒に飲み込んでしまった空気が、胃の中でミルクを押し上げてしまうのが吐き戻しの主な原因です。ゲップは、その空気を外に出してあげるための、命を守るケアです。

■ 基本のゲップのさせ方(3パターン)
やりやすい方法を見つけてください。焦らず、5分程度を目安に行いましょう。

  1. 縦抱きでトントン
    赤ちゃんの頭を肩の高さまでしっかりと支え、縦に抱きます。背中の真ん中(胃の裏あたり)を、下から上へ優しくなで上げたり、丸めた手で軽くトントンしたりします。
  2. 肩に乗せてトントン
    赤ちゃんの体を肩に寄りかからせ、顔が肩の上から出るように抱き上げます。こうすることで、自然と赤ちゃんの胃が伸びてゲップが出やすくなります。背中を優しくさすったり、叩いたりします。
  3. 膝の上で座らせて
    自分の膝の上に赤ちゃんを座らせ、体を少し前に傾けます。赤ちゃんの胸とあごを片手で支え、もう片方の手で背中をトントンします。

【ポイント】

  • ゲップが出なくても焦らない。 5分ほど試して出なければ、飲み込んだ空気が少なかったのかもしれません。
  • 授乳後すぐに横にせず、10分〜15分ほど縦抱きを続けるだけでも、逆流を防ぐ効果があります。

【最重要】予防策:窒息を防ぐ「授乳後の寝かせ方」

ゲップと同じくらい重要なのが、授乳後の寝かせ方です。

  1. 必ず「あおむけ」で寝かせる
    これが絶対のルールです。うつぶせ寝は、吐き戻したミルクで気道を塞いでしまうリスクが格段に高まります。
  2. 上半身を少し高くする
    マットレスの下に折りたたんだバスタオルなどを入れ、頭側が少し高くなるように緩やかな傾斜をつけてあげましょう。これにより、ミルクの逆流を防ぎやすくなります。
    ※窒息の原因になるため、枕やクッションを直接使うのは絶対にNGです。
  3. 顔は横向きに
    寝かせた後、顔をそっと横に向けてあげましょう。万が一吐き戻しても、ミルクが口から流れ出やすくなります。

対処法:もし吐き戻しで顔色が悪くなったら

万が一、吐き戻したもので呼吸が苦しそうになったり、顔色が悪くなったりした場合は、パニックにならず、すぐに行動してください。

  1. 体を横向き〜うつ伏せにする
    すぐに赤ちゃんを横向きにするか、自分の腕の上にうつ伏せに乗せ、頭を体より少し低くします。
  2. 背中を叩く
    肩甲骨の間を、下から上へ力強く数回叩きます。
  3. 口の中を確認する
    口の中にミルクや吐瀉物が見えたら、指にガーゼなどを巻きつけて優しくかき出します。

少しでも様子がおかしいと感じたら、これらの応急処置をしながら、ためらわずに119番通報してください。


授乳、ゲップ、そして寝かしつけ。
毎日繰り返される当たり前のケアの一つ一つが、赤ちゃんの命に直結しています。
この知識が、あなたとあなたの大切な赤ちゃんの、穏やかな眠りを守る盾となることを心から願っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました